目次
/usr
」 が必須となりました
libcrypt1
で失敗する新しいリリースで導入された変更点には副作用が避けられず、どこか他の場所でバグを出してしまうことがあります。この章では、現時点で私たちが知っている問題点を記載しています。正誤表・関連パッケージの付属文書・バグ報告や、「もっと読みたい」で触れられているその他の情報も読んでください。
この項では bullseye から bookworm へのアップグレードに関連した項目を取り扱います。
「アーカイブエリア」 で説明したように、non-free なファームウェアパッケージは
non-free-firmware
と呼ばれる独自のアーカイブコンポーネントから提供されるようになりました。インストール済みの non-free
なファームウェアパッケージがきちんとアップグレードされるのを保証するため、APT の設定変更が必要となっています。ファームウェアをインストールするのに
APT sources-list にnon-free
コンポーネントだけが追加されている場合は、更新した APT
sources-list の記述は以下の様になります:
deb https://deb.debian.org/debian bookworm main non-free-firmware
apt
によってこの章を案内された場合、/etc/apt/apt.conf.d/no-bookworm-firmware.conf
という名前の apt.conf(5)
ファイルを以下の内容で作成することで、この変更について何度も通知されるのを防げます。
APT::Get::Update::SourceListWarnings::NonFreeFirmware "false";
Network Time Protocol (NTP) サーバーからシステムクロックを設定するデフォルトの手法だった ntp
パッケージは ntpsec
に置き換えられました。
ntp
から ntpsec
への移行について、ほとんどのユーザーは何も特別な作業をする必要はありません。
bookworm では、他にも同様のサービスを提供する複数のパッケージがあります。Debian でのデフォルトは systemd-timesyncd
となっていますが、これは
ntp
クライアントをクロック設定の用途のみに必要なユーザーには十分なものでしょう。bookworm は、NTP
サーバーの運用など、より高度な機能をサポートする chrony
や
openntpd
も含んでいます。
Puppet はバージョン 5 から 7 へとアップグレードされ、Puppet 6 シリーズは完全にスキップされました。これは Puppet のエコシステムに大きな変更をもたらします。
クラシックな Ruby ベースの Puppet Master 5.5.x アプリケーションは、upstream によって非推奨にされ、Debian
では利用できなくなりました。これは Puppet Server 7.x へと置き換えられ、puppetserver
パッケージで提供されています。このパッケージは移行用の
puppet-master
パッケージの依存関係によって自動的にインストールされます。
いくつかのケースでは Puppet サーバーは Puppet
マスターの完全互換品となりますが、新しいデフォルト値がデプロイ環境に適合するのを確認するため、/etc/puppet/puppetserver
以下にある設定ファイルをチェックすべきでしょう。特に auth.conf
ファイルでのレガシーな形式は非推奨となっています。詳細は auth.conf
documentation を参照してください。
推奨方法はクライアントの前にサーバーをアップグレードすることです。Puppet 7 サーバーは 過去のクライアントと後方互換性を持っています。Puppet 5 サーバーはアップグレードされたエージェントを扱いつづけることはできますが、新規の Puppet 7 エージェントを登録できません。つまり、サーバーをアップグレードする前に新規に Puppet 7 エージェントをデプロイすると、フリートにこのエージェントを追加できなくなってしまいます。
puppet
パッケージは puppet-agent
パッケージによって置き換えられ、スムースなアップグレードを保証するために移行パッケージとなっています。
広く様々なウェブサイト (YouTube を含みますがこれに限りません) からビデオをダウンロードできることで人気のツール、youtube-dl
は Debian
に含まれなくなりました。その代わり、yt-dlp
を引っ張ってくる中身が空の移行パッケージとしてリプレースされています。yt-dlp
は youtube-dl
のフォークで、現在新規の開発が行われています。
完全な互換を持つラッパーは提供されていないので、スクリプトや自身の挙動を youtube-dl ではなく yt-dlp を呼び出すように調整する必要があります。機能はほぼ同じですが、オプションの一部や細かな挙動が変更されています。詳細は yt-dlp のマニュアルページ、特に Differences in default behavior セクションを必ず確認してください。
fcitx
そして fcitx5
パッケージは、人気の Fcitx インプットメソッドフレームワークのバージョン 4
および バージョン 5 を提供しています。upstream
からのアドバイスに従い、同一のオペレーティングシステム上にこれらを同時にインストールできなくなりました。以前に fcitx
と fcitx5
を同時にインストールしてあった場合、ユーザーはどちらのバージョンの Fcitx
をキープするかを決める必要があります。
アップグレード作業の前に、ユーザーは希望しない Fcitx バージョンの関連パッケージ全て (Fcitx 4 の場合は
fcitx-*
、Fcitx 5 は fcitx5-*
) の purge
を強く推奨します。アップグレード完了後、選択した希望のインプットメソッドフレームワークがシステムで使われるよう、im-config
の再実行を検討してください。
さらなる背景情報を メーリングリストへ投稿されたアナウンス (簡体中国語です) を読むことができます。
bullseye では MariaDB バージョンがパッケージ名に含まれていましたが (例: mariadb-server-10.5
や mariadb-client-10.5
)、bookworm では MariaDB 10.11
同等のパッケージ名は完全にバージョンが無いものとなります (例: mariadb-server
または mariadb-client
)。MariaDB
バージョンはパッケージバージョンのメタデータで確認できます。
バージョン番号なしのパッケージ名への移行が失敗すると判明しているアップグレード時の流れの一つ (Bug #1035949) は以下です
apt install default-mysql-server
mariadb-admin コマンドを使う MariaDB サーバーの SysV init
サービスがシャットダウンを実行する前に mariadb-client-10.5
及びパッケージ内の
/usr/bin/mariadb-admin
ファイルが削除された場合に失敗することになります。回避策は以下を実行します。
apt full-upgrade
を実行する前に以下を実行します
apt upgrade
以上です。
MariaDB でのパッケージ名の変更の詳細な情報については、/usr/share/doc/mariadb-server/NEWS.Debian.gz
を参照してください。
rsyslog
パッケージはほとんどのシステムで不要になっており、削除しても構いません。
多くのプログラムが何をしているかをユーザーに知らせるためにログメッセージを生成します。これらのメッセージは、systemd の
「journal」 か rsyslog
のような 「syslog
デーモン」によって取り扱えます。
bullseye では、デフォルトで rsyslog
がインストールされ、systemd ジャーナルは /var/log/syslog
のような様々なテキストファイルにメッセージを書き込む rsyslog にログメッセージを転送するように設定されていました。
bookworm より rsyslog
はデフォルトではインストールされなくなりました。rsyslog
を使い続けたくない場合、アップグレード後に自動的にインストールされたというマークを以下のコマンドで付けることができます。
apt-mark auto rsyslog
を実施、それから可能な場合は以下で削除を実行します
apt autoremove
さらに以前の Debian のリリースからアップグレードしていて、デフォルトの設定を受け入れていなかった場合、ジャーナルは永続ストレージにメッセージを保存するようには設定されていません: journald.conf(5) に有効にする指示手順があります。
rsyslog
から離れるのを決めた場合ですが、journalctl コマンドを使えば
/var/log/journal
にバイナリ形式で保存されているログメッセージを読むことができます。
journalctl -e
上記のコマンドは、ジャーナル内の最も直近のログメッセージを表示します
journalctl -ef
このコマンドは書き込みされた新しいメッセージを表示します (同様のコマンドを実行する場合は以下のようになります)
tail -f /var/log/syslog
rsyslog
は「高精度タイムスタンプ」の利用をデフォルトにしましたが、この変更はシステムログを分析する他のプログラムに影響を与える可能性があります。この設定をどのように調整するかについての詳細な情報が
rsyslog.conf(5)
にあります。
タイムスタンプの変更は、ローカルで作成された logcheck
ルールの更新が必要になる場合があります。logcheck
は、ルールとして知られている正規表現データベースに照らし合わせて (systemd-journald
または
rsyslog
が生成した)
システムログ内のメッセージをチェックします。メッセージが生成された時間にマッチするルールは、新しい rsyslog
形式にマッチするように更新する必要があります。logcheck-database
パッケージによって提供されているデフォルトのルールは更新されていますが、ローカルで作成したなどの他のルールについては新しい形式を認識するように更新する必要があるかもしれません。ローカルの
logcheck
ルールを更新するのに役立つスクリプトについては /usr/share/doc/logcheck-database/NEWS.Debian.gz
を参照してください。
rsyslog
が生成するログファイルについて変更を行ったので、/var/log
以下のいくつかのファイルは削除しても構わなくなりました。
rsyslog
を使い続ける場合 (「システムのロギング設定への変更」 参照)、/var/log
内のログファイルのいくつかはデフォルトでは生成されなくなります。これらのファイルに書き込まれていたメッセージは
/var/log/syslog
にもありますが、デフォルトでは生成されなくなっています。これらのファイルに書き込まれていたものはすべて、
/var/log/syslog
以下から入手可能です。
作成されなくなったファイル一覧:
/var/log/mail.{info,warn,err}
これらのファイルは、ローカルのメール転送エージェント (MTA) からのメッセージを含み、プライオリティによって分割されていました。
/var/log/mail.log
がメール関連のメッセージを全て含んでいるので、これらのファイル
(およびローテーションされたコピー) は安全に削除できます。このファイル群をアノマリー検知に利用していた場合ですが、適切な代替はlogcheck
などになるでしょう。
/var/log/lpr.log
これらのファイルには印刷に関連するログメッセージが含まれていました。Debian でのデフォルトの印刷システム cups
はこのファイルを使わないので、他の印刷システムをインストールしているのでない限り、このファイル (およびローテーションされたコピー) は削除できます。
/var/log/{messages,debug,daemon.log}
これらのファイル (およびローテーションされたコピー) は削除して構いません。ここに書き込まれていたものはすべて
/var/log/syslog
以下にあります。
OpenLDAP 2.5 は新規のメジャーリリースで、upstream
のリリースアナウンス
に記述されているように複数の非互換性を含んでいます。設定によりますが、slapd
サービスはアップグレード後に必要な設定更新が完了するまで停止し続ける可能性があります。
以下が既知となっている互換性のない変更です:
slapd-bdb(5) および slapd-hdb(5) データーベースバックエンドは削除されました。bullseye でこれらのバックエンドのうちの一つを利用していた場合、bookworm へのアップグレード前に slapd-mdb(5) への移行を強く推奨します。
slapd-shell(5) データベースバックエンドは削除されました。
slapo-ppolicy(5) オーバーレイはスキーマをモジュールに内包するようになりました。以前の外部スキーマが存在していると、新しい内蔵スキーマとコンフリクトを起こします。
アップグレードの完了と slapd
サービスの再開に関する作業手順は、/usr/share/doc/slapd/README.Debian.gz
で確認できます。さらに upstream
のアップグレードに関する記述についても調べておくのが良いでしょう。
長らく grub
はコンピューターにインストールされている他のオペレーティングシステム (OS) を検出するのに os-prober
パッケージを利用しており、検出した OS
を起動メニューに追加できていました。残念なことにこの機能は特定のケース (例: ゲストバーチャルマシンが動作している状態) で問題になるため、最新の
upstream でのリリースでデフォルトでは無効にされました。
システムを起動するのに GRUB を使っていて、他の OS
を起動メニューにそのまま載せておきたい場合は、この挙動を変更できます。/etc/default/grub
ファイルを編集し、設定が GRUB_DISABLE_OS_PROBER=false
となっていることを確認して
update-grub を実行する、あるいは
dpkg-reconfigure <GRUB_PACKAGE>
を実行して、この設定やその他の GRUB の設定をよりユーザーフレンドリーなやり方で変更します。
数多くの GNOME
アプリケーションが GTK3
グラフィックスツールキットから GTK4
へ切り替えをしました。残念なことに、多くのアプリケーションが
orca
のようなスクリーンリーダーでとても使いづらくなっています。
あなたがスクリーンリーダーに頼っている場合は、よりマシなアクセシビリティサポートがある Mate
などの他のデスクトップ環境への切り替えを検討する必要があるでしょう。この切り替えを行うには mate-desktop-environment
パッケージのインストールを行います。Mate
環境での Orca の使い方についての情報はこちらになります。
upstream や他のディストリビューションとの整合性のため、非特権プログラムが特権システムサービスにアクセスするのを許可する
polkit
サービス (以前は PolicyKit
)
は、ローカルのポリシールールについて記述方法と配置場所を変更しました。これからは、セキュリティポリシーのカスタマイズするローカルルールを JavaScript
で記述し、/etc/polkit-1/rules.d/
に配置する必要があります。新しい形式を使ったルールの例は
*
.rules/usr/share/doc/polkitd/examples/
で、詳細は polkit(8)
で参照できます。
これまでは、ルールを pkla
形式で記述し、/etc/polkit-1/localauthority
または
/var/lib/polkit-1/localauthority
以下のサブディレクトリに配置できました。しかし、.pkla
ファイルは非推奨 (deprecated) として扱われるようになり、 polkitd-pkla
パッケージがインストールされている場合のみ動作しつづけることができます。このパッケージは、通常 bookworm
にアップグレードする際に自動的にインストールされますが、将来の Debian リリースには含まれなくなると思われるため、上書きするローカルポリシーは
JavaScript 形式に移行する必要があるでしょう。
Debian は 「merged-/usr
」
と呼ばれるファイルシステムレイアウトを採用し、従来のディレクトリである /bin
,
/sbin
, /lib
そして
/lib64
のようなオプションを含まなくなりました。新しいレイアウトでは、従来のディレクトリはそれぞれ対応する場所である
/usr/bin
, /usr/sbin
,
/usr/lib
, and /usr/lib64
に置き換えられています。つまり、例えば /bin/bash
でも
/usr/bin/bash
でも bash を起動することになります。
For systems installed as buster or bullseye there will be no change, as the new filesystem layout was already the default in these releases. However, the older layout is no longer supported, and systems using it will be converted to the new layout when they are upgraded to bookworm.
The conversion to the new layout should have no impact on most users. All
files are automatically moved to their new locations even if they were
installed locally or come from packages not provided by Debian, and
hardcoded paths such as /bin/sh
continue to work. There
are, however, some potential issues:
dpkg --search
このコマンドは新しい位置に移動したファイルについて誤った答えを出します:
dpkg --search /usr/bin/bash
上記は bash がどのパッケージからきたのか判別できません (ですが、以下は今までどおりで期待通りに動作します。)
dpkg --search /bin/bash
Local software not provided by Debian may not support the new layout and
may, for example, rely on /usr/bin/name
and
/bin/name
being two different files. This is not
supported on merged systems (including new installations since buster), so
any such software must be fixed or removed before the upgrade.
Systems that rely on a 「base layer」 that is not directly writable (such as WSL1 images or container systems using multi-layer overlayfs filesystems) cannot be safely converted and should either be replaced (e.g., by installing a new WSL1 image from the store) or have each individual layer upgraded (e.g., by upgrading the base Debian layer of the overlayfs independently) rather than dist-upgraded.
詳細な情報については、The Case for the /usr merge および Debian 技術委員会での決議を参照してください。
Debian は公式には安定版リリースからその次の安定版リリースへのアップグレードのみをサポートしています。つまり、bullseye から bookworm に、ということです。buster から bookworm へのアップグレードはサポートしておらず、Bug #993755 のため以下のようなエラーで失敗することになります:
Setting up libc6:mipsel (2.36-9) ... /usr/bin/perl: error while loading shared libraries: libcrypt.so.1: cannot open shared object file: No such file or directory dpkg: error processing package libc6:mipsel (--configure): installed libc6:mipsel package post-installation script subprocess returned error exit status 127
このような特定の状況からではありますが、強制的に新しい libcrypt1
をインストールすることで手動でリカバリ可能となります:
# cd $(mktemp -d) # apt download libcrypt1 # dpkg-deb -x libcrypt1_*.deb . # cp -ra lib/* /lib/ # apt --fix-broken install
Debian がセキュリティ問題に対する最小限のバックポートを約束できないパッケージがいくつか存在しています。これらについては以下の章で触れられています。
Debian 12
は複数のブラウザエンジンを含んでおり、これらは一定の割合でセキュリティ脆弱性の影響を受けます。高い脆弱性率と長期ブランチ形式での upstream
でのサポートが限定的なことによって、セキュリティ修正をバックポートしてこれらのブラウザならびにブラウザエンジンをサポートする事が難しくなっています。さらに、ライブラリとの相互依存性のため、開発元での新しいリリースへの更新を極めて難しくしています。webkit2gtk
ソースパッケージを使ったアプリケーション (例: epiphany
) はセキュリティサポートの対象ですが、qtwebkit (qtwebkit-opensource-src
ソースパッケージ)
を使っているアプリケーションはセキュリティサポートの対象外です。
一般的なウェブブラウザ利用として我々は Firefox または Chromium を推奨しています。安定版向けに現行の ESR リリースをリビルドすることで最新を維持します。同じ手法が Thunderbird にも適用されます。
一旦リリースが oldstable
となると、公式サポート対象のブラウザは標準的な保証期間の更新を受け続けられないかもしれません。例えば、Chromium は
oldstable
では通常の 12 ヶ月 ではなく 6 ヶ月のセキュリティサポートのみを受けます。
Debian が提供する python3 インタプリタパッケージ (python3.11
および pypy3
) は、PEP-668 に従って
externally-managed とマークされるようになりました。Debian で提供されるバージョンの python3-pip
はこれに伴って、--break-system-packages
オプションが指定されない限り、Debian の
python インタプリタ環境へ手作業でのパッケージインストールを拒否します。
Debian ではパッケージ化されていない Python アプリケーション (あるいはバージョン)
をインストールする必要がある場合、(pipx
Debian
パッケージにある) pipx を使ってのインストールを推奨します。pipx
は他のアプリケーションやシステムの Python
モジュールから隔離された環境をセットアップし、アプリケーションとその依存関係をその環境へインストールします。
Debian ではパッケージ化されていない Python ライブラリモジュール (あるいはバージョン) をインストールする必要がある場合、可能であれば
virtualenv へインストールするのを推奨しています。virtualenv は Python 標準ライブラリモジュールの
venv
(python3-venv
Debian パッケージ内)、あるいは Python
サードパーティツールの virtualenv (virtualenv
Debian パッケージにあります)
で作成できます。例えば、pip install --user
foo
を実行するのではなく、任意の virtualenv
にインストールするのに mkdir -p ~/.venvs && python3 -m venv
~/.venvs/foo
&&
~/.venvs/foo
/bin/python -m pip install
foo
を実行します。
詳細については /usr/share/doc/python3.11/README.venv
を参照してください。
VLC ビデオプレイヤーは、VA-API と VDPAU を使ってハードウェアアクセラレーションを有効にしたビデオエンコーディング・デコーディングをサポートしています。しかし、VLC の VA-API サポートは FFmpeg のバージョンと強く結びついてしまっています。FFmpeg が 5.x ブランチにアップグレードされたので、VLC の VA-API サポートは無効にされています。ネイティブな VA-API サポートを持つ GPU (Intel や AMD の GPU) のユーザーは、ビデオの再生やエンコーディング時に高い CPU 負荷に遭遇するかもしれません。
ネイティブな VDPAU サポートを提供している GPU (non-free なドライバを利用している NVIDIA) はこの問題の影響を受けません。
VA-API サポートと VDPAU サポートについては、vainfo と vdpauinfo を使ってチェックできます (それぞれ同じ名前の Debian パッケージで提供されています)。
新規パッケージ systemd-resolved
はアップグレード時に自動的にはインストールされません。systemd-resolved
システムサービスを利用していた場合は
アップグレード後に手動で新規パッケージをインストールしてください。それから、システム上にこのサービスが存在しないため、インストールが完了するまで DNS
解決が動作しない可能性があることに注意してください。このパッケージのインストールは systemd-resolved に
/etc/resolv.conf
のコントロールを与えることに自動的になります。systemd-resolved の詳細については 公式のドキュメントを精査してください。systemd-resolved
は過去も、そして今も Debian でのデフォルトの DNS リゾルバでは無いことに留意ください。マシンを systemd-resolved を DNS
リゾルバとして設定していなければ、特に作業は不要です。
新規パッケージ systemd-boot
はアップグレード時に自動的にはインストールされません。systemd-boot
を利用していた場合は、この新規パッケージを手動でインストールしてください。インストールするまではブートローダーとして systemd-boot
の以前のバージョンが利用される点に注意ください。このパッケージをインストールすると、自動的に systemd-boot
をこのマシンのブートローダーとして設定します。Debian でのデフォルトのブートローダーは依然として GRUB
です。以前にこのマシンがブートローダーとして systemd-boot を使うように設定していない場合、特に作業は要りません。
任意のサービス systemd-journal-gatewayd
および systemd-journal-remote
は GnuTLS サポート無しでビルドされるようになりました。これはどちらのプログラムでも --trust
オプションが無くなり、もし指定した場合はエラーが返されるようになったということです。
様々な変更が adduser
にあります。最も目立つ変更点は
--disabled-password
および
--disabled-login
が文字通り動作するようになったことです。より詳細については
/usr/share/doc/adduser/NEWS.Debian.gz
を参照してください。
systemd
でのネットワークインターフェースに関する予測可能な命名規則ですが、Xen の netfront
デバイス情報での固定名の生成にまで拡張されています。これはインターフェイスが以前のカーネルにアサインされたシステム名ではなく、enX
という形式の固定名を持つということを意味しています。アップグレード後、再起動の前にシステムを調整してください。他の情報については NetworkInterfaceNames
wiki page を参照してください。
#
Debian でシステムシェル /bin/sh
をデフォルトで提供する
dash ですが、これまでのように POSIX 互換の挙動を意図しているところから、サーカムフレックス
(^
) をリテラル文字として扱うように変更しました。これは bookworm では
[^0-9]
は「0 から 9 ではない」という意味ではなく、「0 から 9
と ^
」という意味になるということです。
ネットワーク接続間でデータを読み書きする netcat
ユーティリティが 抽象ソケットをサポートし、いくつかの状況下ではデフォルトで利用するようになっています。
デフォルトの状態では netcat
は netcat-traditional
によって提供されています。しかし、netcat
が netcat-openbsd
パッケージによって提供されていて
AF_UNIX
ソケットを使っている場合、この新しいデフォルト設定が適用されます。この場合、
nc コマンドの -U
オプションは
@
で始まる引数をカレントディレクトリにある @
で始まるファイル名ではなく、抽象ソケットの要求であると解釈するようになっています。ファイルシステムのパーミッション設定が抽象ソケットへのアクセス制御に使えなくなくなるため、これはセキュリティに影響を与える可能性があります。./
をファイル名のプレフィックスに使う、あるいは絶対パスを指定すれば、@
から始まるファイル名を使い続けることができます。
以下は、よく知られていて特に廃止されたパッケージの一覧です (説明については 「利用されなくなったパッケージ」 参照)。
廃止パッケージの一覧には以下が含まれます:
libnss-ldap
パッケージは bookworm
から削除されました。この機能は libnss-ldapd
ならびに
libnss-sss
によってカバーされています。
libpam-ldap
パッケージは bookworm
から削除されました。代替は libpam-ldapd
となります。
fdflush
パッケージは bookworm
から削除されました。代わりとして、 util-linux
の
blockdev --flushbufs を利用してください。
GDAL の Perl バインディングは upstream でサポートされなくなったため、libgdal-perl
パッケージは bookworm
から削除されています。GDAL の Perl サポートを必要とする場合は、CPAN で入手可能な Geo::GDAL::FFI パッケージが提供する
FFI インターフェイスに移行できます。BookwormGdalPerl
Wiki ページに記述されているように、自前でバイナリをビルドする必要があります。
次のリリースである Debian 13 (コードネーム trixie) では、いくつかの機能が非推奨となります。13 へ更新する際にトラブルを防ぐためには、ユーザーは他の選択肢へ移行する必要があります。
これには以下の機能が含まれます:
NSS サービス gw_name
の開発は2015年に停止しました。関連パッケージ libnss-gw-name
は将来の Debian
リリースにて削除される可能性があります。upstream の開発者は代わりに libnss-myhostname
の利用を推奨しています。
dmraid
は upstream
での活動が2010年終わりから見られず、Debian でのサポートを受けている状態でした。bookworm
がこれを含む最後のリリースとなるので、dmraid
を利用している場合は対応の計画を適宜してください。
request-tracker4
はこのリリースで
request-tracker5
に置き換えられました。そして
request-tracker4
は将来のリリースで削除されます。今回のリリースのサポート期間内で request-tracker4 から request-tracker5
への以降を計画しておくことをお勧めします。
The isc-dhcp
suite has been deprecated by the
ISC. The Debian Wiki has a list of alternative
implementations, see DHCP Client
and DHCP Server pages for the
latest. If you are using NetworkManager
or systemd-networkd
, you can safely remove the
isc-dhcp-client
package as they both
ship their own implementation. If you are using the ifupdown
package, you can experiment with
udhcpc
as a replacement. The ISC
recommends the Kea
package as a
replacement for DHCP servers.
The security team will support the isc-dhcp
package during the bookworm lifetime,
but the package will likely be unsupported in the next stable release, see
bug #1035972 (isc-dhcp EOL'ed) for
more details.
「Debian は準備が出来たらリリースされる (Debian releases when it's ready) 」とはいうものの、それは残念ながら既知のバグが存在しないという意味ではありません。リリース作業の一環として、深刻度 (severity) が「重大 (serious)」以上のすべてのバグはリリースチームが精力的に追いかけていますが、 bookworm リリース作業の最終工程において「無視をする (ignored)」とタグ付けがされたこれらのバグ一覧はDebian バグ追跡システムで確認ができます。以下のバグはリリース時に bookworm へ影響があったものであり、このドキュメント中で触れる価値があるでしょう:
バグ番号 | パッケージ名 (ソースあるいはバイナリ) | 説明 |
---|---|---|
1032240 | akonadi-backend-mysql | akonadi server fails to start since it cannot connect to mysql database |
918984 | src:fuse3 | fuse -> fuse3 のアップグレードパスを bookworm に向けて提供指定ください |
1016903 | g++-12 | tree-vectorize: O2 レベルで間違ったコードが生成される (-fno-tree-vectorize は動作している) |
1020284 | git-daemon-run | purge に失敗する: deluser -f: Unknown option: f |
919296 | git-daemon-run | 以下のメッセージで失敗する 'warning: git-daemon: unable to open supervise/ok: file does not exist' |
1034752 | src:gluegen2 | non-free なヘッダを含む |
1036256 | src:golang-github-pin-tftp | testing での FTBFS (ソースからのビルドに失敗): dh_auto_test: error: cd _build && go test -vet=off -v -p 8 github.com/pin/tftp github.com/pin/tftp/netascii returned exit code 1 |
1036575 | groonga-bin | Depends: libjs-jquery-flot, libjs-jquery-ui が欠落している |
1036041 | src:grub2 | upgrade-reports: Dell XPS 9550 が bullseye から bookworm へのアップグレード後に起動に失敗する - grub/bios 関連のバグ? |
558422 | grub-pc | アップグレードがハングする |
913916 | grub-efi-amd64 | grub2 2.02~beta3-5+deb9u1 への更新後、UEFI 起動オプションが削除された |
924151 | grub2-common | efi での起動と全体が暗号化されたディスクに対する誤った grub.cfg |
925134 | grub-efi-amd64 | grub-efi-amd64-signed: cryptodisk をマウントしない |
945001 | grub-efi-amd64 | GRUB-EFI がブート関連変数を変更する |
965026 | grub-emu | grub-emu を root で実行した際に linux コンソールでハングする |
984760 | grub-efi-amd64 | アップグレードは動作するが起動に失敗する (error: symbol `grub_is_lockdown` not found) |
1036263 | src:guestfs-tools | testing での FTBFS (ソースからのビルドに失敗): make[6]: *** [Makefile:1716: test-suite.log] Error 1 |
916596 | iptables | iptables.postinst スクリプトがリンク作成に失敗する |
919058 | itstool | its-tools: xmlDocs の開放時にクラッシュする |
1028416 | kexec-tools | systemctl kexec が正しくシステムをシャットダウンせず、マウントしたファイルシステムが破損する |
935182 | libreoffice-core | 同一ホスト上で並行してファイルをオープンするとファイルが消去される |
1036755 | src:linux | 6.1.26 <= x < 6.1.30 では mmap(MAP_32BIT) を使っているアプリケーションを阻害する
[ganeti に影響] |
1036580 | src:llvm-defaults | bullseye からのスムースなアップグレードために依存関係に Breaks を追加してください |
1036359 | elpa-markdown-toc | (wrong-type-argument consp nil) でクラッシュします |
1032647 | nvidia-driver | 525.89.02-1 へのアップグレード後に観血的にスクリーンが空白状態になる |
1029342 | openjdk-17-jre-headless | jexec: can't locate java: No such file or directory |
1035798 | libphp8.2-embed | /usr/lib/libphp.so -> libphp8.2.so への SONAME のシンボリックリンクが含まれていません |
1034993 | software-properties-qt | bullseye からのアップグレード時に必要な software-properties-kde パッケージへの Breaks+Replaces 依存関係が欠落しています |
1036388 | sylpheed | メールチェック時にアカウントがリセットされます |
1036424 | sylpheed | replying to an email you sent doesn't set account accordingly |
994274 | src:syslinux | gnu-efi 3.0.13 で FTBFS (ソースからのビルドエラー) を起こします |
1031152 | system-config-printer | system-config-printer の解除ボタンがパーミッションの上昇ダイアログを表示しません |
975490 | u-boot-sunxi | A64-Olinuxino-eMMC が "Starting kernel ..." で起動がスタックします |
1034995 | python-is-python3 | bullseye からのアップグレード時に必要な python-dev-is-python2 パッケージへの Breaks+Replaces がありません |
1036881 | whitedune | セグメンテーション違反を起こします |
1036601 | xenstore-utils | Depends: xen-utils-common が欠落しています |
1036578 | python3-yade | Python モジュールを含んでいません |